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岩泉線の成り立ち

岩泉線は、押角(おしかど)付近の小本川(おもとがわ)で産出される耐火粘土を運搬するため、まず茂市〜浅内(あさない)の区間が着工されました。

そして、1942(昭和17)年6月に茂市〜岩手和井内(いわていない)間が小本線として開業。その後、1944(昭和19)年7月に押角駅まで延伸。戦後、押角トンネルを開通させ、1947(昭和22) 年11月には宇津野(うつの)駅(のちに廃止)まで延伸開業しました。

ここで工事は一時中断され、のちの1957(昭和32)年5月、小本線として当初予定されていた浅内駅まで開業しました。延伸はここで終了しましたが、浅内から線名の由来でもある三陸の小本までの区間が調査線に指定されたのです。そして1962(昭和37)年、工事線に指定され、のちに着工。1972(昭和47)年2月には岩泉まで延伸開業しました。同時に、路線名が岩泉線に改称されました。

岩泉線は学生の貴重な通学手段として活躍した

岩泉線は、北上山地のなかの山深い勾配路線であり、キハ52形というエンジンを2台搭載した気動車が活躍しました。

とくに押角トンネルを頂点とした押角峠には、30パーミルの急勾配の難路が続きました。峠にある小さな押角駅は、気動車が2両停まれるだけの木製のホームがあり、深い谷底に駅がありました。晩年は1日わずか3往復しか列車がなく、乗客の多くは通学する高校生でした。

単線の軌道が続き、朝になれば民家の煙突から薪を燃やした煙が漂い、人々の営みが感じられる素朴な光景が見られ、ゆったりとした時間が沿線に流れていたのです。

岩泉線は脱線事故をきっかけに廃線へ

わずか3往復の列車が走る時間だけは駅や深山の線路が喧騒にまみれ、鉄道の存在が強く感じられたものでした。また、紅葉の美しい絶景路線でもありました。

沿線人口が少ないため利用者数が少ないのはやむを得ませんが、1980(昭和55)年施行の国鉄再建法では、第2次特定地方交通線に指定され廃止対象となりました。

しかし、岩泉線は並行する代替道路が未整備なこともあり廃止対象からは逃れ、存続することが決まったのです。とはいえ、減少するばかりの利用者数は、深刻な問題となっていました。

そこへ冒頭で述べたとおり、土砂崩れによる脱線事故が起こり、再び存続問題が浮上します。協議の結果、バス路線に転換させることになり岩泉線の廃止が決まりました

最終日は、とくにセレモニーも行われない寂しいお別れとなりましたが、沿線住民に惜しまれながら廃止を迎えました。地域輸送を支えた岩泉線の活躍は人々の記憶に残され、永遠に語り継がれることでしょう。

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Part.1 地図で読み解く岩手の大地

・盛岡のまちを見守る名峰 岩手山はどうやってできた?
・宮沢賢治が名付けた理想の地? イーハトーヴの風景地とは
・三陸海岸のうち南部だけが リアス海岸になっている理由
・三陸沖で多発する地震と 津波発生のメカニズムを探る
・平泉の黄金文化を支えた 玉山金山はどこがすごい?
・カルスト台地に刻まれた猊鼻渓と 幽玄洞は古生代の化石の宝庫!
・ティラノサウルス類化石も発見! 国内最大の琥珀産地・久慈

などなど岩手のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 岩手を駆け抜ける鉄道網

・軌道から車両まで対策は万全! 積雪地帯を快走する東北新幹線
・一ノ関以北で客車が走り続けた 大幹線・東北本線の歴史と実力
・急勾配を克服する物流の幹線 IGRいわて銀河鉄道がすごい!
・『銀河鉄道の夜』の原風景を走る岩手軽便鉄道に始まった釜石線
・三陸縦貫鉄道を引き継ぎ誕生! 沿岸部を走る三陸鉄道リアス線
・龍ヶ森の急勾配を越えろ! 奥羽山脈を横断する花輪線

などなど岩手ならではの交通事情を網羅。

Part.3 岩手で動いた歴史の瞬間

・人々が定住し集落が生まれ 南北それぞれの文化が発達
・胆沢平野を中心に米作が進み 強大な権力も生まれる
・蝦夷のリーダー・アテルイと ヤマト王権の熾烈な争い
・安部氏から奥州藤原氏 やがて群雄割拠の戦乱へ
・前九年・後三年の役が終結し 花開いた黄金の平泉文化
・大崎氏と斯波氏の時代を経て 南部氏と伊達氏が台頭
・戊辰戦争での敗北から 紆余曲折ののち岩手県が成立

などなど、激動の岩手の歴史に興味を惹きつける。

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