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蔵王高速電鉄は着工されるも朝鮮戦争により資金難となり計画は消滅

都市間輸送、温泉客輸送のほか、蔵王山麓で産出される硫黄鉱、硫化鉄鉱、林業などの資源開発もにらみ、1949(昭和24)年10月には本線が着工。翌年には電車5両を日立製作所に発注しました。電車は全長が15.8mながら日立オリジナル設計のMMC超多段式自動加速制御器を搭載し、モーター出力94キロワットの高性能車両でした。

しかし、朝鮮戦争の勃発による物価の高騰で資金難に陥り工事は中断。電車は3両が完成したまま残り2両がキャンセルとなりました。そして、1960(昭和35)年に「鉄道起業廃止届」を当時の運輸省に提出。蔵王高速電鉄は事実上消滅します。

蔵王高速電鉄の遺構と車両は現在も残る

以降、約60年の歳月が流れますが、現在でも中断された工事の遺構が成沢〜上ノ山間に点在し、築堤や橋台、石垣などが残存しています。注文流れになった電車3両は、1953(昭和28)年、岡山県玉野市の備南電気鉄道に売却されました。同鉄道ではモハ100形と名乗って運行されましたが、赤字のため解散。玉野市が引き継いで運営することになり、1956( 昭和31)年に玉野市営電気鉄道の所有となりました。

ところが玉野市営電気鉄道は、電気設備が老朽化したことやコストダウンのため、電車運転をやめ気動車化を行うことになり、旧蔵王高速電鉄のモハ100形3両はここでも余剰車となってしまいます。

蔵王高速電鉄の車両は岡山県玉野市電保存会で大切に保存されている

そこで3両は、1965(昭和40)年、香川県の高松琴平電気鉄道に売却されました。ここでは750形として運行されることとなり、前面に貫通扉を設け、制御器を変更するなどの改造を行って実際に長く活躍しました。しかし、2006(平成18)年には最後まで残っていた1両、760号が引退。これを受け、玉野市の市民有志が「玉野市電保存会」を結成し、募金活動などを行って760号を第二の故郷である玉野市に戻しました。

760号、つまり蔵王高速電鉄が発注した電車は安住の地を得て、現在は玉野市総合保険福祉センター「すこやかセンター」で保存展示(一般公開)されています。玉野市電保存会では、波瀾万丈の生涯を歩んだ760形や蔵王高速電鉄の歴史を丁寧に紹介しており、幻に終わった鉄道は、今後も広く認識され語り継がれることでしょう。

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Part.1 地図で読み解く山形の大地

・出羽富士・鳥海山の成り立ちと火山がもたらす湧水や地形
・山形盆地の成り立ちと扇状地に発展した県都・山形市
・大江町の最上川川床で発見!ヤマガタダイカイギュウって何だ!?
・河川がつくった肥沃な庄内平野を35㎞におよぶ庄内砂丘が守る
・最上川・五百川峡谷の誕生と流域に形成された河岸段丘
・どうやって誕生し段丘が発達?山形唯一の有人離島「飛島」の謎
・冬の名物・美しい樹氷はどうして蔵王山に形成されるのか?

…などなど山形のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 山形を駆け抜ける鉄道網

・急勾配と豪雪を克服し新庄へ至る全国初のミニ新幹線・山形新幹線
・急峻な板谷峠で奥羽山脈越え!逞しき幹線・奥羽本線の今昔
・九州~北海道の貨物車両が走り日本海縦貫線をなす羽越本線
・日本初の交流電化路線にして今や貨物の重要路線の仙山線
・最上川の絶景峡谷を走る!新庄と余目を結ぶ陸羽西線
・三山・高畠・尾花沢の3路線 山形交通の鉄道路線網とは?

…などなど、山形ならではの交通事情を網羅。

Part.3 山形で動いた歴史の瞬間

・木の実でつくったクッキーも!? 山形県域の縄文時代
・和人が蝦夷の領域へと進出! 城柵から見る開拓の歴史
・鎌倉御家人が地頭として進出! 次第に激化する権力争い
・伊達氏との対立を経て統治者に君臨した最上氏の栄枯盛衰
・街道と航路が整備され 発展する沿道の産業と商業
・領主交代に領民が抵抗! 天保の国替え反対一揆とは?
・異名は鬼県令!? 初代県令三島通庸が推進した土木工事

…などなど、激動の山形の歴史に興味を惹きつける。

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