とくに注目したいのが押出遺跡（おんだしいせき：東置賜郡高畠町）です。押出遺跡は約5800年前にできた低湿地遺跡です。「水漬け」になっていて空気にさらされなかったため、通常なら腐食してしまうような植物性遺物も良好な状態で保存されており、さながら「縄文のタイムカプセル」と呼ぶにふさわしい様相を呈していました。
この押出遺跡からは、炭化した「縄文時代のクッキー」が発見されました。落葉広葉樹林から採集できるクルミ・クリなどの堅果類を石皿ですり潰して粉末状にし、焼いたものであり、草食動物の肉も入れていたのではないかと推測されています。栄養価が高く、狩りなどにいく際に携行したのではないかと思われています。

また、押出遺跡から出土した土器や木製品には、赤や黒の漆で彩色されたものも見つかっており、本遺跡からの出土品は縄文人の暮らしぶりを雄弁に物語るものばかりでした。

縄文時代中期の西ノ前遺跡（最上郡舟形町）からは、合計48点もの土偶が出土しました。そのなかには、高さ45㎝という国内最大級の立像土偶が存在していたのです。

この土偶は頭部が半円形になっていて、複数の孔が開けられています。目や鼻などがない象徴的な造形は、この時代の土偶の特徴ともいえるでしょう。腕は省略され、肩から胸部が張り出し、臀部が後方に突き出ていることから「出尻型土偶」とも呼ばれています。妊産婦を表現したと思われるこの土偶は8頭身の美しいプロポーションから「縄文の女神」の名で広く知られるようになり、2012（平成24）年には国宝の指定を受けています。

山形県内で土偶が発見された遺跡と出土土偶の制作時期。破片を含め、県内ではこれまでに900点以上の土偶が発見されています。
舟形町webサイトを元に作成

なお、縄文時代後期の三崎山遺跡（みさきやまいせき：飽海郡遊佐町）からは青銅製の刀子（とうす）が見つかっています。
長さ約26㎝、内反りで刃渡りは約17㎝。一般的に日本で青銅器が使用されるようになるのは弥生時代からとされており、また、この時代には青銅製品を製作する技術がまだ確立していないことから、海を渡って大陸から伝わってきたものではないかと推測されていました。

その後、東京文化財研究所による化学分析の結果、この青銅刀子は約3000年前の中国の商（殷）時代の青銅器と同じ鉛でつくられたことが判明。縄文時代からすでに、広範囲にわたる人と物の交流があったようです。この青銅刀子と似た形状の石製刀子が各地の遺跡から出土しており、縄文人が模倣してつくったと考えられています。

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