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別府温泉は人口掘削により多数の温泉井戸が見つかった

1871( 明治4)年に別府港が整備され、1873(明治6)年には別府と大阪を結ぶ瀬戸内航路が開設されました。さらに1911(明治44)年には鉄道が開通して官営別府駅が開業すると、水陸両路から別府への訪問が可能となります。その間、別府各地で公設浴場が建設され、明治中期までには別府、浜脇、鉄輪(かんなわ)などを中心に旅館街が形成されました。

こうしたインフラ整備の裏側で温泉地の開発に多大な貢献をしたのが、「湯突き」と呼ばれる掘削技術でした。地熱温泉活動が活発な別府一帯では、人工掘削によって多数の温泉井戸が見つかったのです。明治後期の湯口数は、自然湧出17に対して人工掘削はじつに576にも達しました。
もともと別府一帯にはいくつかの町村とそれぞれに代表的な温泉があり、それらは「別府八湯(別府・浜脇・観海寺(かんかいじ)・堀田(ほりた)・亀川(かめがわ)・柴石(しばせき)・鉄輪・明礬(みょうばん)温泉)」と称され、現在もその呼称は使われていますが、掘削によって多数の温泉井戸が見つかり、八湯それぞれの範囲が曖昧なものになってしまったといいます。

油屋熊八は別府温泉の観光地化に大きく貢献した立役者

明治後期から昭和初期にかけ、別府温泉郷は観光地として大きな飛躍を遂げることになりますが、その発展に大きく貢献したのが油屋熊八(あぶらやくまはち)です。

油屋熊八は1863(文久3)年、伊予国宇和島(うわじま)(現・愛媛県宇和島市)に生を受けます。30歳のときに大阪で株取引を始めて莫大な富を築きますが、相場で失敗して全財産を失い、アメリカに渡って放浪。帰国後、ふたたび相場師となりますがうまくいかず、妻が身を寄せていた別府に移住しました。そしてクリスチャンだった油屋熊八は、「旅人をねんごろにせよ」という『新約聖書』の言葉を合言葉に「亀の井旅館」を創業します。

油屋熊八は、1928(昭和3)年に亀の井自動車を設立。女性車掌(バスガイド)を乗せた大型バスで、「地獄」と呼ばれる自然湧出の源泉を周遊する「地獄めぐり遊覧バス」の運行を開始します。これが人気を博し、地獄めぐりバスツアーが定着したのでした。このほかにもアイデアマンだった油屋熊八は、常にユニークな話題を提供することで多くの客を集め、「観光地・別府温泉」を広く認知させることに成功しました。

油屋熊八は別府温泉郷の宣伝をすべて自費でまかなっていたといいます。そんな油屋熊八を別府市民は、最大の感謝と尊敬の念を込めて、「別府観光の父」と呼んでいます。

>>別府温泉「地獄めぐり」を楽しむならこちらの記事へ

石垣原(いしがきばる)扇状地の南部に別府・浜脇・観海寺・堀田、北部に亀川・柴石・鉄輪・明礬といった8つの温泉(別府八湯)が分布。熱泉があふれ出す「地獄」も各所に点在しています。

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・大分県の地形総論
・源泉数と湧出量で日本一を誇る 火山・断層・扇状地が生んだ別府温泉
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・日田盆地を形成した地殻変動と幻想的な霧の発生メカニズム
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Part.2 大分で動いた歴史の瞬間

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・中世総論 豊前と豊後で大きく異なる支配体制
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・大内氏と大友氏の覇権争い
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・近世総論 大友支配の終焉と小藩分立
・豊後で栄えた海上貿易
・九州のオランダと呼ばれるまでに日田の金融業が発展したのはなぜ?
・近現代総論 大分県の成立と近代化の遅れ
・初代県令によって築かれた県都大分市の基礎

Part.3 大分で育まれた産業や文化

・別府温泉を一大観光地にした亀の井旅館・油屋熊八の功績
・寒村から日本一の温泉町に! 湯布院がやりとげた起死回生
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・関サバ・関アジはブランド化!豊後水道が全国屈指の好漁場なわけ
・昭和初期には産出量全国1位に!鯛生金山の開発・発展と現在
・もともとは粕取り焼酎だった!? 大分の焼酎が全国で人気のブランドに
・臼杵石仏や大分元町石仏など大分に築かれた石仏文化

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