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紫式部と源氏物語:源氏物語の構成

『源氏物語』は3部構成となっており、彰子への出仕前に執筆が開始されて以降、段階を経て執筆された考えられています。その構成はこのようなものになっています。

源氏物語~第一部~

第一部(三十三帖)は、夫・藤原宣孝の没後に執筆されたオリジルの物語です。

【あらすじ】
帝の子として誕生した光源氏が多くの恋を経験しながら、宮廷において栄華を極めていきます。その間に、流離するなどの波乱もある内容です。

源氏物語~第二部~

第二部(八帖)は、評判を受けて執筆された、光源氏の後半生の物語。いわば続編です。

【あらすじ】
栄華を極めた光源氏が、絶望的な苦悩に生きる後半生。最愛の妻を亡くすと同時に、光源氏の人生も幕を閉じます。

源氏物語~第三部~

第三部(十三帖)、「宇治十帖」は、光源氏の物語が完結後、近代小説に近い趣で執筆されています。

【あらすじ】
光源氏が没したあとの時代が舞台。光源氏の子・薫と宇治の姫君たちとの苦しい恋が描かれ、第一部と第二部の続編というべき内容です。

紫式部と源氏物語:源氏物語の制作背景

彰子の皇子出産後の11月、内裏(だいり)へ帰る日が近づき慌ただしさが増すなか、彰子の命で『源氏物語』の豪華本が制作されることになります。

作者である紫式部は、料紙(りょうし)の選定や清書を依頼する一方で、清書の綴(と)じ集めをするなど、一連の作業を取り仕切っています。道長が上質な光沢のある薄様紙(うすようがみ)や筆、墨、硯まで用意していることを見ても、これは一条天皇へのお土産であったと考えられます。

一条天皇は以前に『源氏物語』を読んで感心しており、そのため彰子は新しい部分を豪華本に仕立て、天皇と楽しもうとしたのでしょう。

このエピソードから『源氏物語』が段階を経て書き足されていたことその執筆が宮仕えを始めた後も続いていたことが分かります。このとき、作られた豪華本は残っていませんが、公文書や漢文用の巻子本(かんすぼん)ではなく、冊子本(さっしぼん)で製本されたと考えられます。

草稿が持ち去られる?!

またこの作業中、紫式部が自室に保管していた『源氏物語』の草稿が藤原道長に持ち去られたことが『紫式部日記』に記されています。
彰子の妹の子(けんし)に見せようとしたようですが、紫式部は書き換え前の不完全な草稿が出回ってしまったと悔しがりました。著作権などない当時の原稿の扱い方が伝わる記述であり、興味深いですね。

紫式部と源氏物語:源氏物語の豪華本作りの製本過程

『源氏物語』の豪華本作りの記事からは、平安時代の製本の過程と『源氏物語』の草稿流出の原因が見て取れます。

①原稿執筆
紫式部が『源氏物語』の草稿を執筆する。

↓ 草稿と紙屋院が提供する染紙を提出する。
※紙屋院とは、和紙や中古和紙である漉返紙(宿紙)などの製造を担当する図書寮所属の機関です。

②清書作業
能書家により清書作業が行われる。
草稿は、清書を担当した能書家の手元に残り、作者のもとには返却されなかったため、ここからも流出しました。

↓ 染紙に書かれた清書が依頼主の元へ戻る。

③製本作業
染紙に書かれた清書を1枚1枚折り重ねていく。
表紙用に、美しい色合いに染められた紙が選ばれる。
表紙用の紙を最上部に重ねたあと、ノドの部分をきれいな糸を使って結び綴じて完成!

※紫式部は彰子とともに冊子作りを行なったといいます。平安時代、文書は巻子本(巻物)の形式で残すことが義務付けられていましたが、物語にそれは適用されず、先述のように冊子として編まれていました。

宮中の紙はどのように作られていたか

和紙や中古和紙である漉返紙(すきがえしがみ)(宿紙(しゅくがみ))などは、紙屋院(かみやいん)という機関で製造されていました。和紙の流し漉き法は紙屋院で開発されたと考えられ、ここから全国に伝播したようです。『延喜式(えんぎしき)』では1日に120~200枚ほどの紙を漉き、毎年2万枚を内蔵寮(くらりょう)に納めることが定められていました。

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世界最古の長編小説ともいわれる『源氏物語』は、平安時代の宮廷を舞台に展開される主人公・光源氏と女性たちの恋愛模様を描いた物語で、今もなお多くの人に愛読される日本文学の古典です。ですが、全54帖という長編ゆえに最後まで読み通すのは大変困難な作品であることでも知られています。
本書はこの大長編小説『源氏物語』のあらすじと、作者・紫式部の人と生涯を図版と地図を豊富に用いながらわかりやすく解説した『源氏物語』の入門書です。

【第1部】紫式部とその時代
〔第1章〕平安時代の後宮生活
〔第2章〕紫式部の生涯

【第2部】 押さえておきたい『源氏物語』
〔第3章〕光源氏の青年時代―恋の旅路を歩む貴公子
〔第4章〕栄華の頂点―位人臣(くらいじんしん)を極めた光源氏
〔第5章〕宇治十帖―光源氏亡き後の世界

【監修者】竹内正彦

1963年長野県生まれ。國學院大學大学院博士課程後期単位取得退学。博士(文学)。
群馬県立女子大学文学部講師・准教授、フェリス女学院大学文学部教授等を経て、現在、國學院大學文学部日本文学科教授。専攻は『源氏物語』を中心とした平安朝文学。著書に『源氏物語の顕現』(武蔵野書院)、『源氏物語発生史論―明石一族物語の地平―』(新典社)、『2時間でおさらいできる源氏物語(だいわ文庫)』(大和書房)、『図説 あらすじと地図で面白いほどわかる!源氏物語(青春新書インテリジェンス)』(青春出版社、監修)、『源氏物語事典』(大和書房、共編著)ほか。

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