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フタバスズキリュウの化石を発見したのは高校生!

フタバスズキリュウの化石が発見されたのは、1968(昭和43)年10月6日。当時高校2年生だった鈴木直(すずきただし)氏が、いわき市北部を流れる大久川(おおひさがわ)河岸で、対岸に露出している脊椎動物のものと見られる尾骨の化石を見つけました。

いわき市の北部には、双葉層群(ふたばそうぐん)と呼ばれる中生代白亜紀の地層が分布し、大久川の上流にはこの地層が露出していました。その地層からアンモナイトやサメの歯が採取されていて、鈴木少年は、中学時代から休日などに現地へ出かけて化石の調査をしていたのです。

彼は、発見した尾骨の化石について、国立科学博物館の小畠郁生(おばたいくお)博士に手紙を書きました。小畠博士は、同僚の長谷川善和(はせがわよしかず)研究員とともに現地を訪れ調査に着手。すると、脊椎の化石は首長竜の一部分とわかり、翌1969(昭和44)年から本格的な発掘が始まりました。

フタバスズキリュウ産出場所

フタバスズキリュウ産出場所

フタバスズキリュウの化石は、福島県道246号と平行して流れる大久川河岸(いわき市大久町)で見つかりました。

いわきで多産するアンモナイト

中生代白亜紀の地層である双葉層群からは、多種多様なアンモナイトや二枚貝などの化石が採取されています。双葉層群は海水面の変動によって、陸になったり海になったりした河口付近や浅瀬で堆積した地層で、フタバスズキリュウよりも年代が古い地層からは花や花粉、胞子などの植物化石も見つかっています。

このような白亜紀の地層は関東平野東端の太平洋岸に断続して分布しており、南は千葉県銚子市から茨城県の那珂湊などを経由し福島県沿岸部のいわき市、南相馬市を経て宮城県、岩手県に続いています。

フタバスズキリュウの化石が残っていたのは奇跡

化石が埋まっている地層は双葉層群の最上位にあり、その上はまったく別の新しい地層(古第三紀始新世~漸新世の白水(しらみず)層群)が不整合で覆っていました。これはフタバスズキリュウの遺骸が海底に沈んだのち、しばらくはその上に地層が堆積していましたが、やがて隆起して陸地化。それが次に沈降して海底で再び新しい地層が堆積し、再度隆起したことを意味します。

さらに大久川の侵食により、首と頭骨の後ろ部分が失われるなど、長期間、侵食作用を受けていました。いうならば、化石として残ったのは奇跡に近かったのです。

発掘により、頭骨や脊椎骨、肋骨、骨盤、左右の後ひれ足といったエラスモサウルス科 の首長竜全体の約7割が完全体として採取されました。

フタバスズキリュウは発見から40年近くを経て学名が認定された

この首長竜は、発見した地層と発見者の名前からフタバスズキリュウという和名がつけられましたが、長い間、正式な学名が決まっていませんでした。2006(平成18)年、カナダのカルガリー大学で首長竜の研究をしていた佐藤たまき博士らの研究チームが、頭骨の目と鼻のあいだの距離や手足の各骨格の長さの比の違いなどから、フタバスズキリュウはエラスモサウルスとは異なる新属新種の首長竜とする論文を発表。こうしてフタバスズキリュウは、国際的にフタバサウルス・スズキイとして認定されました。

福島県立博物館

住所
福島県会津若松市城東町1-25
交通
JR磐越西線会津若松駅からまちなか周遊バス「ハイカラさん」で23分、鶴ヶ城三の丸口下車すぐ
料金
大人280円、高校生以下無料、企画展は別料金

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Part.1:地図で読み解く福島の大地

・阿武隈山地や奥羽山脈が境目!浜通り・中通り・会津の3地域
・いわきで発掘された首長竜化石フタバスズキリュウとは?
・福島市がぽっかり入る福島盆地はどうやってできた?
・福島発展の礎を築いた常磐炭田
・磐梯山の大噴火と裏磐梯・五色沼湖群の形成
・猪苗代湖畔からウニ化石!?劇的な会津の地形の成り立ち
・石川町が日本三大産地のひとつ ペグマタイトとはどんな岩石?
・大改修から100年が経過 暴れ川・阿武隈川の今と昔

などなど福島のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2:福島を駆け抜ける鉄道網

・東北本線旧線の黒磯~白河間には明治時代の面影が残されている!?
・日本最大のC62形SL牽引「ゆうづる」が走った常磐線
・かつては東京と新潟を結ぶ架け橋、会津地方の大幹線・磐越西線
・東京・浅草から特急が直通しトロッコ列車も走る会津鉄道
・かつて硫黄輸送で活躍した猪苗代町の沼尻鉄道とは?
・只見川に架かる数々の鉄橋ほか 魅力いっぱい絶景鉄道・只見線

などなど福島ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3:福島で動いた歴史の瞬間

・人間の歯や骨をペンダントに!?原始福島の不思議な弔い
・東北地方最古の前方後円墳!会津大塚山古墳が示す会津の力
・浜通りに古代製鉄遺跡を発見! なぜ大規模な製鉄が行われた?
・中世史総論(関東武士が進出し国盗り合戦!白河・伊達・蘆名・岩城氏の攻防)
・南北朝時代に南朝が拠点とした幻の寺院城郭・霊山寺とは?
・伊達氏のルーツは福島にあり!奥州制覇を果たす道のり
・相馬地方を約700年統治した古豪・相馬氏とはどんな一族?
・奥州きっての城下町・若松はどのようにして生まれた?
・会津若松城で籠城戦を続けた会津藩が開城に至るまで

などなど、激動の福島の歴史に興味を惹きつける。

Part.4:福島で育まれた産業や文化

・最澄と大論戦した僧・徳一が開祖!慧日寺から始まった会津の仏教文化
・猪苗代湖の水を郡山へ! 幹線延長52㎞の安積疏水事業
・県境には二ツ小屋隧道が残る 福島と米沢を結んだ万世大路
・東北唯一の中央競馬場が福島市につくられたわけ
・幕府直営の半田銀山 明治時代は五代友厚が経営
・感染症と闘い続けた細菌学者・野口英世の生涯
・日本酒の金賞受賞数日本一!福島の地酒はなぜすごい?

などなど福島の発展の歩みをたどる。

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