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香林坊が流行発信地として賑わう

大正から昭和にかけて、西洋文化の影響を受けて最先端のファッションを楽しむモダンボーイ、モダンガールといわれる若者が見られるようになります。

彼らを略してモボやモガと呼んだのをまねて香林坊は「リンボウ」と呼ばれ、文章ではわざわざ「RINBOU」とローマ字で表記されるほど親しまれるようになりました。

東京の銀座のように、香林坊でもカフェ文化が賑わいを見せ、昭和6(1931)年にオープンした「美人座」と、その後に開店した「赤玉」は、女給の数や派手な宣伝で人気を争ったようです。遊郭とは異なる近代的な雰囲気や気楽さで、カフェはサラリーマンを魅了したと考えられます。

大正2(1913)年には映画館の先駆けとなるような施設も作られ、香林坊は流行発信地としての色合いを強くしていきました。

香林坊に石川県庁舎が完成

この頃、金沢の大通りには次第にモダンな建物が並び始めていました。

香林坊では、大正13(1924)年に2代目となる石川県庁舎が完成。国会議事堂などの設計に携わった、大蔵省大臣官房臨時建築部の技師・矢橋賢吉(やばしけんきち)が設計を手がけました。石川県で最初の鉄筋コンクリート造りの建物で、今は「しいのき迎賓館」として残されています。

香林坊のシンボル的建物と今後

もう1つ、香林坊のシンボルというべき建造物といえば、日本銀行金沢支店を思い浮かべる人が多いでしょう。明治42(1909)年に日本海側初の出張所として開設された、全国9統括支店の1つであり、2019年には開設110周年を迎えました。

この日銀金沢支店が建てられたのは、利家の妻まつの実家で、前田家の重臣でもあった高畠定吉(たかばたけさだよし)の屋敷があった場所。戦国時代までは金沢最古の旧石浦山王社があったとされ、日銀金沢支店の裏庭には稲荷神社があります。

鳥居の奥では、推定樹齢500年のタブの木が大事に保存されてきました。初代の建物は、東京駅や日本銀行本店も手がけた建築家の辰野金吾(たつのきんご)による設計。現在の建物は昭和29(1954)年に建てられた2代目で、地上2階建てながらずっしりとした重厚感が界隈でひと際目を引きます。

しかし、こちらも完成から70年近くが経ち、老朽化が進んでいるため、金沢駅西へ移転する予定となっており、長く香林坊の風景に欠かせなかった建物の跡地がどうなるのか、注目が集まっています。

香林坊と「THE金沢TOWN」

2007年以降、香林坊は金沢市の中心街である片町、竪町、広坂、柿木畠(かきのきばたけ)と一緒に、「金沢5タウンズ」(現在は「THE金沢TOWN」)として独自のまちづくりを打ち出してきました。

香林坊の国道沿いの欅で点灯するイルミネーションは冬の金沢の風物詩のひとつです。江戸時代は北陸道沿いの商店街として、明治時代には近くに旧制第四高等学校ができたことで学生街として栄えてきましたが、現在でも若者やファッションの街というイメージは変わりません。

一方で、尾山神社や長町の武家屋敷も近く、歴史の香りも色濃いという特徴が、いかにも金沢の街らしいのです。

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・伊能忠敬を苦しめた外浦・内浦
・珠洲岬はなぜパワースポット?
・霊峰白山と「しらやまさん」
・金沢は街そのものが博物館
・能登の歴史的遺産「千枚田」
・金沢の用水が果たした役割
・坂を上ると世界が変わる?魔性が宿る金沢の坂
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Part.2 石川を走る交通網のアレコレ

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・石川の伝統工芸が随所にあしらわれた、能登を走る2つの観光列車
・石川県唯一の私鉄、北陸鉄道の歴史をふりかえる

Part.3 石川の歴史を深読み!

・実は3代利常が名君だった!
・前田家の運命を決めた末森城
・利家の妻が有名なのはなぜ?賢妻としてまつが残した功績
・地名の由来はお坊さん?金沢モダンを象徴した香林坊
・縁結びの聖地、恋路海岸に伝わる悲恋伝説
・城郭建築の美を感じる金沢城
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・江戸時代から続く近江町市場
・日本在来馬「能登馬」とは?
・「小京都」と呼ばれたくない!金沢で受け継がれる武家文化
・那谷寺は胎内くぐりの聖地だった
・平家の末裔と2つの時国家
・倶利伽羅峠と安宅関で辿る義経の悲劇
・有名古墳&遺跡はココに注目

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Part.4 石川で育まれた文化や産業

・六の数字に込められた意味とは?日本三名園「兼六園」は理想の庭
・人間国宝の数が日本一!石川県に息づく伝統工芸の土壌
・古九谷に込めた前田家の対抗心
・あの国宝は実は下絵だった!? 等伯の最高傑作『松林図屏風』
・三文豪が愛した犀川と浅野川
・大伴家持の能登巡行と万葉集
・偉人を輩出した第四高等学校
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