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『古事記』とはどんな書物?

『古事記』の序文によると、天武天皇の命で稗田阿礼(ひえだのあれ)が暗唱した帝紀(天皇の系譜、年代記)と旧辞(伝承されていた神話、伝説など)を、元明天皇の命を受けた太安万侶(おおのやすまろ)が記録したものです。

上巻、中巻、下巻の全3巻で構成されており、上巻は天地創造から始まる神代(かみよ)(神々が日本を支配したという時代)までを、中巻は神武天皇から応神(おうじん)天皇まで、下巻は仁徳天皇から推古天皇までの系譜や事件などを記しています。上巻すべてが神話なのは、天皇家の正統性の主張のためです。このころは天皇家の支配が盤石ではなかったため、神代から続く正統な家だと説く必要があったのです。

歴史書というよりは文学的な要素が強く、歌物語風の説話、伝承、神話などを多く含んでいます。漢字の音・訓を使い分けて、和文で表現していることからも、国内の人々にわかりやすく伝えることも目的のひとつだったことがうかがえます。

『日本書紀』とはどんな書物?

一方、『日本書紀』は歴史書としての要素が多い書物です。全30巻の内、神代は2巻までで、3巻以降は神武天皇の代から持統(じとう)天皇の終わりまでを時系列的に記録し、文学的な要素は含まれていません。太安万侶も編集に参加しており『古事記』との関係が深いですが、『古事記』がひとつの説を正しいとしているのに対して、『日本書紀』は諸説を併記し、後世の判断を待ちたいと記載しています。漢文で表記されており、中国や朝鮮半島の歴史書も参考文献として使用されていることから、国外に日本の歴史を説明するのが目的だったと思われています。

『古事記』『日本書紀』に記される国産み神話

2冊を参考にすると次のような物語が描かれています。高天原(たかまかはら)の神々の命で男神・イザナギと女神・イザナミは日本国や神々を産みました。神々のなかには日の神・アマテラスや暴風神、農業神など多面性をもつ神・スサノオもいました。ですが、イザナミは火の神・カグツチを産んだ際に亡くなってしまいます。

その後、イザナギは息子のスサノオに海原を支配するように命じます。しかしスサノオは黄泉の国に行って母に会いたいと泣き続けたためイザナギの怒りをかって追放されてしまいます。

天上界から地上界の出雲に降りたスサノオは、ヤマタノオロチが毎年娘を食べ、その年はクシナダヒメの番になっていることを知ります。

そこでスサノオはオロチに強い酒を飲ませて眠ったところを斬り殺して、尾から三種の神器のひとつ・草薙剣を見つけます。スサノオは草薙剣をアマテラスに献上すると、クシナダヒメを妻としました

このオロチとは奥出雲町から出雲市に流れる斐伊川だという説があります。斐伊川は洪水の多かった川で支流がいくつかあり、それが8つの頭と尾を持つ凶暴なオロチに例えられたのではないかというものです。

国引き神話とは?

出雲の神話で有名なエピソードのひとつが国引き神話です。これは『出雲国風土記』にのみ記されています。

スサノオの後裔(こうえい)・ヤツカミズオミツヌは出雲の国が狭いことを憂い、朝鮮半島にあった余った土地を綱で引き寄せました。この国引きに使った杭が大田市の三瓶山で、綱が出雲市の薗の長浜だとされます。これで出雲市大社町(たいしゃまち)北部の土地ができたました

2度目と3度目は隠岐の島(異説もある)から土地を引っ張り、旧平田市から松江市北部の地域を出雲の国の土地としました。これで宍道湖が誕生しました。

最後は石川県の能登半島から土地を引っ張り、松江市美保関町まで土地を広げます。このときの国引きで使われた杭が鳥取県の大山(だいせん)、綱が弓ヶ浜半島でした。こうして今の出雲の国ができ、中海も誕生したとされています。

『出雲国風土記』国引き神話に関係があるとされる土地

『出雲国風土記』国引き神話に関係があるとされる土地

ヤツカミズオミツヌは海の向こうの朝鮮半島にある新羅に余った土地を見つけ、幅の広い大きな鋤をその土地に打ち込み土地を掘り起こし、切り離しました。そして三つ編みにした綱をかけて引っ張りました。こうして合わさった国は、杵築(きづき)のみさき(出雲市小津町から日御碕まで)となりました。
隠岐諸島からは狭田(さだ)の国(出雲市小津から東の松江市鹿島町佐陀まで)と、闇見(くらみ)の国(松江市島根町のあたり)を引っ張ってつなげました。
高志(こし)の国(石川県の能登半島にあたる)から引っ張ってきた国が三穂の埼(松江市美保関町のあたり)になりました。
ヤツカミズオミツヌが大山と三瓶山にかけた綱が、現在の薗の長浜と弓ヶ浜だといわれています。なお、国引きを終えたヤツカミズオミツヌが杖を突き「おゑ」と言い、杖で突いて草木が生い茂った意宇(おう)の社ができた郡が、かつて意宇郡があった地域だといいます。

国引き神話にまつわる史跡

出雲地方にはスサノオと国引きに関する史跡があります。そのいくつかを紹介していきます。最初は縁結びで有名な松江市佐草町の八重垣神社です。スサノオがオロチからクシナダヒメを守るため隠した場所で、二人が結婚した際、スサノオが「八雲立つ 出雲八重垣 妻込めに 八重垣造る その八重垣を」という歌を詠んだことから八重垣の宮となったそう。

雲南市大東町(だいとうちょう)の須我神社も2人の結婚に関わっています。新居として建てたのがこの社で日本初の宮殿であることから日本初之宮と呼ばれています。

出雲市大社町の日御碕神社はスサノオとアマテラスを祀っており、伊勢神宮が日本の昼を、日御碕神社は日本の夜を守っているとされています。

国引きを行なったヤツカミズオミツヌが葬られた妙見山に建っているのが出雲市西園町(にしぞのちょう)の長浜神社です。主祭神であるヤツカミズオミツヌの国引きが綱引きの祖とされ、現在はスポーツ上達に御利益があるといわれています。また、綱になった薗の長浜(稲佐の浜)は、スサノオの後裔オオクニヌシがアマテラスの使者に対して国を譲ったという国譲りの舞台としても知られています。

出雲地方には他にも神話に関する史跡があります。それらを巡れば、神話がより身近に感じられるのではないでしょうか。

プロバスケットボールチーム「島根スサノオマジック」

島根スサノオマジックは、島根県松江市をホームとし、B.LEAGUEに所属しているプロバスケットボールチームです。チーム名はスサノオノミコトとマジックを合わせたもので、「神の不思議な力が勝利に導く、勝利へ後押しする」という意味を込めて命名されたといいます。
中国地方では初のプロバスケットボールチームで、山陰地方のプロスポーツクラブとしてはサッカーチーム・ガイナーレ鳥取に次いで2クラブ目です。ロゴに使われている青、銀、黒にはそれぞれ意味があります。青は島根の自然の中でも水と空のイメージから「空高く舞い上がり頂点を目指す」、銀は石見銀山とスサノオの武器である天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)に由来し「強力な攻撃力」、黒は島根県木のクロマツが築地松(家を囲う防風林)にも使われることから「堅固なディフェンス」を、それぞれイメージしているとされています。

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Part.1 地図で読み解く島根の大地

・「弁当忘れても傘忘れるな」な島根の天気
・山陰地方と呼ばれるのは島根県と鳥取だけ?
・水質の良い一級河川「高津川」と大井谷の棚田
・隠岐諸島の「レッドクリフ」をはじめとする島々
・三県境と全国5番目に広い湖「中海」と7番目の「宍道湖」
・全盛期は東アジア最大、世界で2位の産銀量「石見銀山」は港まで続いていた?
・東京ドームほどの海浜公園「石見畳ヶ浦」

ほか

Part.2 島根を駆ける充実の交通網

・「銀の道」さらに「うなぎ街道」「鯖街道」とは?
・朝廷への情報伝達に使われた「官道」とは?
・土木学会が指定した土木遺産「福浦トンネル」
・一畑電鉄と一畑駅、大社線と大社駅
・Mランドドライビングスクールとは?
・JR木次線の「三段式スイッチバック」とは?
・島根の旧三江線トロッコ、初めて県境越え広島へ
・奥出雲おろちループ
・古代山陰道
・「ベタ踏み坂」江島大橋
・未成線広浜鉄道
・神にまつわる名前のついた10の駅
・最後の寝台列車サンライズ出雲

ほか

Part.3 島根の歴史を深読み!

・『日本書紀』『古事記』から神々を知ろう
・古墳も多い島根県
・『出雲国風土記』の世界「黄泉の穴」
・出雲大社を筆頭とする様々な「神社」
・「出雲」「石見」「隠岐」から「島根に」
・山陰のモンサンミッシェル?こと宮ケ島 衣毘須神社
・出雲の方言 東北の訛りとの共通点
・なぜ津和野町に「森鴎外記念館」が?「小京都」と呼ばれるわけ
・歴史的大打撃「廃仏毀釈」で失われたモノ
・島流しといえば「隠岐」?
・江戸時代の島根県、松江藩による出雲平野の開拓

ほか

Part.4 島根で育まれた産業や文化

・「相撲」発祥の地と言われる出雲
・名湯の多い島根県
・継承される多くの神楽と安来節
・歌舞伎の原型になったとされる「阿国歌舞伎」
・「玉鋼」と「たたら製鉄」と黒曜石
・日本で唯一「黄長石霞石玄武岩」を産出
・小泉八雲の作品と小泉邸

ほか

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