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プレートテクトニクス理論におけるプレートの運動

プレートテクトニクス理論では、プレート運動によって集められた堆積物が陸地を構成している、と考えられています。その陸地を構成している岩石を付加体(ふかたい)と呼びます。付加体は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むことにより、海洋プレートの上に堆積した堆積物が大陸プレートにくっついて(付加して)形成された地質体です。ブルドーザーにかきとられて押し出されるように、海洋プレートから堆積物が剥ぎ取られ、大陸の下側に付け加わるのです。地球を覆うプレートは1年の間に数cmずつ移動しています。海洋プレートは常に沈み込んでいるため、多く堆積物が供給されている沈み込み帯では堆積物は付加され続け、古い地層は上へと押し上げられて地表へと姿を現します。

プレートテクトニクスが主流となる以前の日本

今でこそプレートテクトニクスは世界中で認められている理論ですが、実は日本の地質学会では1980年ごろまでは「地向斜造山論(ちこうしゃぞうさんろん)」が主流でした。日本海は大陸地殻が陥没することによってできたと考えられていたのです。それがなぜ、プレートテクトニクス理論が認められることになったのでしょうか。それには地層の年代測定が大きく関わっています。

日本で行われていた研究のやり方

1960年代以前は、石灰岩(せっかいがん)から産出される大型化石で年代を割り出していました。大きな化石しか地層から取り出す技術がなく、しかも大型化石は当時の日本ではそれほど多く発見されていませんでした。しかし1960年代に入ると、硬く固結した地層からプランクトン殻のごく小さな化石を抽出する方法が発見されます。さらに1970年代には、今まで難しかったチャートや泥岩(でいがん)からも化石が見つけられるようになりました。

技術の進歩により過去の研究に誤りが認められる

1980年代にプランクトンの一種である放散虫(ほうさんちゅう)による年代決定の手法が確立されると、微小なプランクトンの化石年代も分かるようになりました。プランクトン化石の抽出や年代測定により、今まで認知されていた日本の地層年代は違っていたことが判明したのです。

プレートテクトニクス理論を高知で証明

当時の高知大学理学部地質学教室が中心となって、これを四万十帯(しまんとたい)で研究。高知県の四万十帯全域の調査を始めました。四万十帯とは西南日本の太平洋側に沿って分布する地層帯。長野県・山梨県・静岡県にまたがって連なる赤石(あかいし)山脈(通称:南アルプス)付近から紀伊(きい)半島、四国、九州を通り、沖縄まで延びています。延長約1500km、幅の最大は約100kmにもなるとされています。四万十帯は主に砂岩(さがん)泥岩の互層からなります。砂岩泥岩以外にも異なる岩石が含まれていることは知られていましたが、岩石の起源については謎のままでした。

高知県は主に付加体である三波川帯(さんばがわたい)、秩父帯(ちちぶたい)、四万十帯からなる。

プレートテクトニクス理論を裏付ける発見が出土

調査により、放散虫を主とする岩石は砂岩泥岩よりも古く、陸から遠い遠洋の堆積物(チャート)であることが分かりました。さらに火成岩(かせいがん)が冷えて固まるとき、その場所の緯度を記憶し磁石となる性質を利用。高知県の四万十帯の中に含まれている火成岩の緯度を調べたところ、赤道付近の海で冷え固まったものだということが判明します。赤道付近の岩石が遠く離れた日本に存在しているということは、その岩石が長距離を移動してきたことを示しており、動くプレートが地球表面を覆っているという、プレートテクトニクスを証明する1つの要因となったのです。

プレートの動きによって遠洋から堆積物が移動。大陸に堆積物が付け加わり、四国の大地の多くを形成している。

プレートテクトニクス理論は日本で受け入れられる

これらの研究結果を発表したことによって、世界でプレートテクトニクスがより認知されることとなり、日本でもプレートテクトニクス理論が受け入れられるようになったといいます。これが、高知県が陸上で初めてプレートテクトニクスが実証された場所の1つ、といわれるゆえんです。

それ以降、現在に至るまで多くの地質学者たちが高知県を訪れ、研究を重ねています。高知県の四万十帯は地質の保存状態がよいため、世界で一番調べられている付加体だともいわれています。

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Part.1 地図で読み解く高知の大地

・森・川・海の恵みを受ける高知県の風土と特徴
・岩石が混ざり合う地質帯メランジュと高知県の台地
・最後の清流と呼ばれる四万十川、その流れと秘密に迫る
・室戸岬の海洋深層水は多分野で利用可能性
・桂浜のカラフルな五色の石はどうやってできた?
・海と大地が交わる場所室戸岬で地球の営みを感じる
・早明浦ダムは「四国の命」治水・利水で4県が受益

・・・などなど高知の自然を解説。

Part.2 高知を駆ける充実の交通網

・高知県の鉄道大動脈土讃線と予土線の歴史と魅力
・人も運んだ魚梁瀬森林鉄道は姿消しても住民になお郷愁
・着工から37年がかりで開通の住民の足、ごめん・なはり線
・3つの日本一を有するとさでん交通の路面電車
・高知県の高速道路整備・津波対策の新たな役割
・跳ね橋の「手結港可動橋」渡れるのは1日7時間

…などなど高知の交通事情を解説。

Part.3 高知で動いた歴史の瞬間

・どうやって都に帰った?土佐日記から見る土佐国
・京都から土佐国へ移住した公家大名・土佐一条氏とは?
・四国全土を1代で征服、姫若子・長宗我部元親の躍進
・広大な土佐国をどう治める?一豊が築いた土佐藩の基礎
・土佐から北アメリカ大陸へ!ジョン万次郎の生涯
・幕末の土佐藩を雄藩に導いた坂本龍馬の軌跡と真実
・明治維新から間もない高知で生まれた自由民権運動

…などなど高知の歴史を徹底解説。

Part.4 高知で生まれた産業や文化

・村の予算を超える売り上げ、馬路村のゆず加工品
・高知県が目指す次世代型施設園芸農業とは
・黒潮の恵みが育むカツオは高知県民のソウルフード
・著名漫画家を多く輩出する高知が育んだまんが文化
・植物の研究に没頭した牧野富太郎博士の功績を知る
・1人1人が主役になれる自由で熱いよさこい祭り

…などなど高知の産業と文化を丁寧に解説。

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