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藤原道長が行った、摂関政治とは

摂関政治とは、摂政・関白が天皇の職務や権限を代行、補佐して政治を行なう体制です。とくに天皇が幼いときに、藤原氏のトップが摂政として国政を代行し、天皇が成人すると関白となり天皇を補佐した体制を指します。

ただし、平安王朝において権力の頂点に立つには、天皇の外戚(がいせき)、とくに外祖父となることが不可欠でした。摂政・関白になっても外戚でなければ、天皇に対して影響力を行使することができなかったのです。そこで、藤原氏の人々は娘を天皇の妃として入内させ、娘が産んだ皇子を天皇に即位させようとしたのです。

さらに宮中に入った娘が天皇の寵愛(ちょうあい)を得るよう、娘の周りに紫式部清少納言のような教養豊かな女房たちを仕えさせ、文化サロンを築いていきました。まさに愛情と政治が密接に結びついた時代だったといえます。

思惑通り娘が天皇の子を産み、その子が天皇になり外戚となった摂関家の藤原道長は、権力を手に入れ、官職などの人事権を一手に握りました。そのため経済的な利益が大きい受領(ずりょう)(地方長官)への任官を希望する貴族からの貢ぎ物が集まり、莫大な富も手にしたのです。紫式部も藤原氏の中流に属する受領階級の娘です。

藤原道長は、紫式部と恋愛関係?

そんな藤原道長と紫式部とは恋愛関係にあったとする説があります。

『紫式部日記』には、夜の男の訪問を受けるも部屋を開けなかったという記述があり、この男が藤原道長ではないかと推測されたのです。藤原道長が紫式部を歌で「好き物と評判」とからかい、紫式部が「男性経験もないのに」と返した生々しい和歌が残るのも恋愛説の根拠のひとつです。

また、室町時代に制作された系図集でも、紫式部は「藤原道長の妾」と書かれています。

藤原道長の妻・倫子から紫式部への意味深な贈り物

紫式部日記には、重陽(ちょうよう)の節句には藤原道長の妻の倫子(りんし)から、「これで若返りなさい」という歌とともに、若返りの効果があるという菊の露を含ませた綿を渡されてねぎらわれたことなどが語られています。

倫子からのこの歌については、「若いつもりでもあなたはもう年よ」という痛烈な皮肉という説があります。紫式部を藤原道長の妾とする説が根強くあり、『紫式部日記』にも藤原道長との間柄を〝におわせ〟る記事が見られ、ふたりの微妙な関係がうかがえます。

紫式部が残している藤原道長への歌

――― 人にまだ 折られぬものを 誰かこの
     すきものぞとは 口ならしけむ

(訳:まだどなたからも手折られたことなどありませんのに、色好みだなんて誰がいいふらしたのでしょう)

※『紫式部日記』より。彰子の出産を待つなか、庭にあった女郎花の枝を折って差し出してきた藤原道長に対して紫式部が詠んだ歌です。藤原道長は枝を指しながら、「すきものと 名にし立てれば見る人の 折らで過ぐるは あらじとぞ思ふ(色好みだと有名になっているから、ひと目見て誘惑せずに放っておく人なんていないと思いますよ)」と詠んだようです。

――― ただならじ とばかりたたく 水鶏ゆゑ
     あけてはいかに くやしからまし

(訳:ただではおくまいといわんばかりの勢いで叩く水鶏のために、戸を開けなどしたらどんなにくやしい思いをしたことでしょう)

※ 夜更けに戸を叩いた男性からの「夜もすがら 水鶏より異になくなくぞ 真木の戸口に たたきわびつる(一晩中叩く水鶏より激しく泣きながら、あなたの局の戸を叩きあぐねたことだ)」という歌に対する返歌。相手は藤原道長とする説が有力です。

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〔第1章〕平安時代の後宮生活
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〔第4章〕栄華の頂点―位人臣(くらいじんしん)を極めた光源氏
〔第5章〕宇治十帖―光源氏亡き後の世界

【監修者】竹内正彦

1963年長野県生まれ。國學院大學大学院博士課程後期単位取得退学。博士(文学)。
群馬県立女子大学文学部講師・准教授、フェリス女学院大学文学部教授等を経て、現在、國學院大學文学部日本文学科教授。専攻は『源氏物語』を中心とした平安朝文学。著書に『源氏物語の顕現』(武蔵野書院)、『源氏物語発生史論―明石一族物語の地平―』(新典社)、『2時間でおさらいできる源氏物語(だいわ文庫)』(大和書房)、『図説 あらすじと地図で面白いほどわかる!源氏物語(青春新書インテリジェンス)』(青春出版社、監修)、『源氏物語事典』(大和書房、共編著)ほか。

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