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伊達吉村が藩主の頃に悪化した財政

1716(享保元)年、徳川吉宗が八代将軍になると、反対する新井白石らを退け、享保の改革に取り組みます。質素倹約で歳出を抑え、年貢増収を図る緊縮財政策でした。

同時代、伊達吉村が仙台藩主になってから20年近く過ぎていましたが、そのころには伊達家の財政も幕府と同じように悪化しており、改革が必要になっていました。

伊達吉村は当初、享保の改革を行った将軍吉宗の施策に倣ったようです。総検地を行って隠田を見つけ出し、税収を上げようと目論みました。しかし、伊達領内では地方知行制をとっていたため、各知行地の館主らが頑強に抵抗。総検地は実現できなかったのです。

伊達吉村は改革のため試行錯誤を繰り返す

伊達領では、前回の検地から、すでに50年以上が過ぎています。各館主の知行地ではその間に、新田開発も行われていたでしょう。それらが見つかって課税されれば、租税負担が一気に増えます。館主には伊達家筋の者も多かったでしょうから、権力を使って強行するわけにもいきません。地方知行制の欠点が、ここでも露呈しました。

また、初期の伊達吉村による改革策は、領内のみに通用する札を増刷したり禁止したりと迷走します。試行錯誤を繰り返していたといってもいいでしょう。

伊達吉村の財政改革が軌道に乗り始める

改革が軌道に乗り始めたのは、1726(享保11)年以降のこと。その施策は、徹底した歳出の削減と歳入の増加でした。

とくに、歳入を増やすために採用されたのが「買米制(かいまいせい)」の強化で、これが成功しました。自家消費以外の米を領内から出すことを禁じ、伊達本家がすべて買い上げたのです。その元金は、5年間、家臣の俸給を減らすことで賄いました。

そうして得た金で領内の余剰米を買い上げ、他国に売ることで差益を得ようとしたのです。総検地で増税を行うのと、結果的に同じです。

伊達吉村は財政を再生させた賢君

さらに、1733(享保17)年、西国の飢饉で江戸の米価が暴騰し、伊達家は約50万両という莫大な利益を上げることができました。そのほか、貨幣鋳造で収益を得るなどして、財政再建に成功したのです。

伊達吉村は伊達家中興の祖と評価されるわりに、エピソードなどはあまり残されていないといわれます。自らを誇らない賢君であったのかもしれません。

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