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磐梯山は噴火と山体崩壊を繰り返しながら形成

一般的に火山は、溶岩や火山砕屑物(さいせつぶつ)が積み重なって成長したり、地震や火山活動によって山体崩壊を起こしたりして姿を変えていきます。

実際に磐梯山もこれまで何度もその姿を変えてきました。磐梯山は、噴火による大規模な山体崩壊を約5万年前と1888(明治21)年、少なくとも2回は起こしていると考えられています。

磐梯山の南側は「会津富士」とも呼ばれる

磐梯山を南(表磐梯)から見ると美しい三角形の山頂が目につき、それは会津富士とも称されます。ところが、北の裏磐梯から見ると一転、荒々しいカルデラが目にとまります。

磐梯山の噴火のなかでも1888年の大爆発は火山災害史上最大級

大きくえぐれたカルデラは、1888(明治21)年の噴火により形成されました。山頂にあった小磐梯山(こばんだいさん)の北側が吹き飛び、山頂から670m、約3分の1を失い、大爆裂火口ができたのです。このときの噴火は、爆発の規模や人的被害の大きさから、火山災害史上、最大級のひとつとして知られています。

磐梯山の大噴火は地震とともに起こった

7月初旬、噴火の1週間ほど前から磐梯山周辺では火山の鳴動や遠くで鳴る雷のような音が聞こえていました。これが噴火の前兆だったのです。

7月15日午前7時頃、地震が発生。震動は徐々に強くなっていきます。そして、7時45分に磐梯山が噴火を始めました。爆発が15~20回ほど連続して起こり、最後に北へ向かって横向きの大爆発を起こしました。

この最後の爆発で磐梯山の山頂部分にあった小磐梯山が崩壊し、多量の岩屑(がんせつ)なだれとなり北側の麓(ふもと)に流れ下ったのです。小磐梯山が消滅したあとには、北へ向けて大きくえぐられた馬蹄形カルデラが残されました。

磐梯山の大噴火は地震とともに起こった
観光協会・観光局

奥に見える右のピークが大磐梯山、左が櫛ヶ峰。大磐梯山手前のくぼんだ部分が1888(明治21)年の山体崩壊によってできたカルデラ壁。手前の池は五色沼の毘沙門沼。

磐梯山の噴火による被害

岩屑なだれによって麓の5つの村などが埋没し、477人もの犠牲者が出ています。同時に噴火の爆風が山麓を下り、山の東側は多くの木々がなぎ倒され、家屋や学校が破壊されました。噴き上がった火山灰は、東側の山麓では10数㎝も降り積もったといわれます。

磐梯山の噴火によって生まれた裏磐梯の五色沼

この火山灰や砕屑物が泥流となり、水系を大きく変えました。磐梯山の東を流れる長瀬川が土石流によってせき止められ、桧原湖(ひばらこ) 、小野川湖、秋元湖、曽原湖(そはらこ) 、五色沼湖沼群(ごしきぬまこしょうぐん)など大小300もの湖や沼が生まれたのです。

磐梯山と裏磐梯の湖沼群

磐梯山と裏磐梯の湖沼群

磐梯山と裏磐梯の湖沼群磐梯山の等高線を見ると、北西側がほかと違っているのがわかります。1888(明治21)年の噴火で山体崩壊したためで、土石流が川をせき止めて桧原湖や小野川湖、秋元湖、曽原湖、五色沼湖沼群などが形成されました。

磐梯山の噴火によってできた五色沼湖沼群とは

五色沼湖沼群とは、毘沙門沼(びしゃもんぬま)、赤沼、青沼、瑠璃沼(るりぬま)、弁天沼、みどろ沼、竜沼(たつぬま)、柳沼など大小30余の湖沼の総称です。

湖水に含まれている化学成分の違いや季節・気象条件によって、いくつかの沼では湖水が波長の短い青い光を散乱させ、エメラルドグリーン、コバルトブルー、エメラルドブルーなど、さまざまな色に見えます。この色から「五色沼」と呼ばれているわけです。

磐梯山の噴火によってできた五色沼湖沼群とは
観光協会・観光局

五色沼湖沼群のひとつ青沼。最大深度は6mで多量のカルシウムと硫酸イオンを含みます。きわめて透明で沼底にウカミカマゴケが繁茂するため青色に見えるのです。

毘沙門沼

住所
福島県耶麻郡北塩原村桧原
交通
JR磐越西線猪苗代駅から磐梯東都バス休暇村・桧原行きで25分、五色沼入口下車、徒歩10分
料金
情報なし

磐梯山の噴火による山体崩壊で猪苗代湖が形成された?

なお、約5万年前の山体崩壊は表磐梯で起き、その岩屑なだれが猪苗代湖の形成にかかわったとされますが判然としていません。

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・阿武隈山地や奥羽山脈が境目!浜通り・中通り・会津の3地域
・いわきで発掘された首長竜化石フタバスズキリュウとは?
・福島市がぽっかり入る福島盆地はどうやってできた?
・福島発展の礎を築いた常磐炭田
・磐梯山の大噴火と裏磐梯・五色沼湖群の形成
・猪苗代湖畔からウニ化石!?劇的な会津の地形の成り立ち
・石川町が日本三大産地のひとつ ペグマタイトとはどんな岩石?
・大改修から100年が経過 暴れ川・阿武隈川の今と昔

などなど福島のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2:福島を駆け抜ける鉄道網

・東北本線旧線の黒磯~白河間には明治時代の面影が残されている!?
・日本最大のC62形SL牽引「ゆうづる」が走った常磐線
・かつては東京と新潟を結ぶ架け橋、会津地方の大幹線・磐越西線
・東京・浅草から特急が直通しトロッコ列車も走る会津鉄道
・かつて硫黄輸送で活躍した猪苗代町の沼尻鉄道とは?
・只見川に架かる数々の鉄橋ほか 魅力いっぱい絶景鉄道・只見線

などなど福島ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3:福島で動いた歴史の瞬間

・人間の歯や骨をペンダントに!?原始福島の不思議な弔い
・東北地方最古の前方後円墳!会津大塚山古墳が示す会津の力
・浜通りに古代製鉄遺跡を発見! なぜ大規模な製鉄が行われた?
・中世史総論(関東武士が進出し国盗り合戦!白河・伊達・蘆名・岩城氏の攻防)
・南北朝時代に南朝が拠点とした幻の寺院城郭・霊山寺とは?
・伊達氏のルーツは福島にあり!奥州制覇を果たす道のり
・相馬地方を約700年統治した古豪・相馬氏とはどんな一族?
・奥州きっての城下町・若松はどのようにして生まれた?
・会津若松城で籠城戦を続けた会津藩が開城に至るまで

などなど、激動の福島の歴史に興味を惹きつける。

Part.4:福島で育まれた産業や文化

・最澄と大論戦した僧・徳一が開祖!慧日寺から始まった会津の仏教文化
・猪苗代湖の水を郡山へ! 幹線延長52㎞の安積疏水事業
・県境には二ツ小屋隧道が残る 福島と米沢を結んだ万世大路
・東北唯一の中央競馬場が福島市につくられたわけ
・幕府直営の半田銀山 明治時代は五代友厚が経営
・感染症と闘い続けた細菌学者・野口英世の生涯
・日本酒の金賞受賞数日本一!福島の地酒はなぜすごい?

などなど福島の発展の歩みをたどる。

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