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浜松の産業のはじまりは綿花栽培と綿織物

浜松市、磐田市などを含む遠州平野は、広く遠州灘に面し、日照時間が長く温暖なのが特徴です。天竜川などの大きな河川が流れていることから、水が豊富で、一帯では綿花の栽培が盛んに行われていました。

天竜川流域は洪水になると石や岩、倒木などが交じった土砂を一気に流し出すため、下流域の平野はそれらで埋まることがありました。このため、低い土地に作られた水田は、幾度となく被害を受けてきました。住民は水田を元通りにするために洪水時の土砂や残土を集め、島のように積み上げ、畑として利用しました。高く盛り上がった土地は、水田に散らばる畑が島のように見えるため「島畑」「田島」と呼ばれており、綿花は主にこのような畑で作られました。

同時に、東西主要都市を結ぶ東海道の途中にあったことで、人の行き来が生まれ、綿織物を手掛ける職人の技術が、多くこの地にもたらされました。これも後にものづくりの土壌と気質を育むきっかけとなりました。

浜松の繊維産業「浜松注染そめ」は夏の風物詩

綿花栽培から始まった浜松の繊維産業。その一つが「浜松注染そめ」です。注染そめは、型染めの一種で、生地の上に型で糊を置き、染料を上から注いでゆかたや手ぬぐいの生地を染めることからこう呼ばれます。表裏がなく、多彩な色づかいときれいなぼかしが特徴。今も浜松の伝統的な技として受け継がれています。

【浜松の産業】自動車・オートバイメーカー

代表的なのが、豊田佐吉(とよださきち)です。自動車メーカーとして世界にその名を知られるトヨタグループの創業者ですが、その原点となるのが、彼が明治期に発明した織機(しょっき)でした。1930(昭和5)年には、スズキの創業者である鈴木道雄(すずきみちお)もサロン織機を発明するなど、もともと遠州で盛んだった織物が次々に機械化を遂げます。

遠州織物は地場産業として生産量を大きく伸ばし、後にその技術が自動車の開発、そしてホンダやヤマハ発動機といった世界的なオートバイメーカーの誕生へとつながっていきます。

【浜松の産業】自動車・オートバイメーカー

【浜松の産業】楽器づくり

また、同時期にもう一つ浜松に産業が生まれました。楽器の生産です。アメリカから浜松にもたらされたオルガンを修理したのが山葉寅楠(やまはとらくす)。楽器メーカー、ヤマハの創業者です。

医療機器の修理工だった山葉寅楠は、この修理をきっかけに独学で日本で初めて国産ピアノを作りましたが、そこに味方したのが気候風土でした。冬になると日本海側からの風が南アルプスを超え、冷たい乾いた風となって遠州一帯に吹き抜けます。「遠州の空っ風」と呼ばれるそれが、南アルプスの山々で切り出され、天竜川で運ばれた木材を乾燥させるのに適していました。

質のいいピアノに欠かせない乾燥した木材が、地元で作れる。そんな好条件が浜松を「楽器の街」に成長させていったといえるでしょう。

浜松の産業を支える「やらまいか精神」

もっといいもの、新しいものをつくりたい、チャレンジしたい、という「やらまいか精神」が浜松の気質として深く根付き、今も浜松のものづくりを支えています。

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日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。静岡の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

Part.1 地図で読み解く静岡の大地

・富士山が標高日本一、駿河湾が深海日本一になった理由
・南から来た、火山の贈り物、伊豆半島ジオパーク
・交通の難所「大崩海岸」は海底噴火によって作られた!
・「日本三大人工美林」数えられる天竜の杉林は川の氾濫に関係があった?
・磐田市にトンボの楽園があった!
・湖?川?海?浜名湖の正体を探れ!
・世界遺産「三保松原」は江戸時代に「島」から「半島」になった!

などなど静岡のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 静岡を駆け抜ける鉄道網

・静岡県の鉄道の歴史は沼津市内の貨物線から始まった
・かつては「東海道本線」だった由緒正しき(?)御殿場線
・JRと私鉄が一体となって形成する伊豆半島東海岸の鉄道ルート
・意外なエピソードを秘めた東海道本線・静岡鉄道の並行区間
・「政令指定都市・静岡」の市内も走る山岳鉄道、大井川鐵道井川線
・軍事上の要請が背景にある天竜浜名湖鉄道(旧国鉄二俣線)のルート

などなど静岡ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 静岡で動いた歴史の瞬間

・静岡最古の古代人は愛鷹山付近にいた!
・日本考古学の聖地・登呂遺跡
・日本書紀に見る静岡とヤマトタケルの伝説
・源頼朝も流された流刑地伊豆
・下田が開港の舞台になったのはなぜか
・江戸城よりも大きかった駿府城天守台
・日本にたった一つしかない形の城・田中城
・家康の遺体は日光ではなく久能山にある?
・徳川慶喜と渋沢栄一の意外なつながり

などなど、激動の静岡の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 静岡で育まれた産業や文化

・模型の首都!静岡が生まれたワケ
・バイクに楽器。浜松のものづくりは綿花の栽培から
・ボールは友達!サッカー王国しずおか
・富士山麓の湧水が育てた製紙業
・月ではなく富士山に帰ってしまう「かぐや姫」
・仏教界のスーパースター空海が静岡に残した伝説

…などなど静岡の発展の歩みをたどる。

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