湯原温泉郷と奥津温泉は中国山地の南際に位置しています。山陰を含む中国山地付近は降水量が多く、大量の雨水が山に沿って地下深くまで染み込みます。中国山地は隆起してできた地形のため、山の麓（ふもと）には割れ目（断層）が多くあります。地下の熱で温められた地下水は、その地層の割れ目に沿って上がってくることにより自噴。温泉となって湧き出てきます。中国山地南部に湯量の豊富な温泉が点在しているのは、中国山地に降って溜まった水量が多いためだと考えられます。

県北部は背に中国山地があり、温泉もその影響を受けています。

岡山県には活火山が存在しません。最も近い火山は大山（だいせん）（鳥取県）ですが、火山としては活動度が低く、監視・観測体制が必要な日本各地の50火山には含まれていません。岡山県の温泉の多くは非火山性温泉に属していると考えられますが、大山や蒜山（ひるぜん）の近くに位置する温泉は、マグマの熱源の影響を受けている可能性も考えられます。岡山県は美作三湯だけでなく、他にも多数の温泉が存在しますが、その中には自噴だけでなく、掘削によって造られた温泉も含まれています。

それでは、各温泉について見ていきましょう。

深層地下水型は雨や雪が火山以外の地熱で温められてできます。

湯原地域にある五つの温泉地（湯原温泉・下湯原温泉・真賀温泉（まがおんせん）・足温泉（たるおんせん）・郷緑温泉（ごうろくおんせん））の総称。真庭（まにわ）市にあり、北に大山や蒜山高原、南に神庭（かんば）の滝を擁しています。湯原ダムの下流、旭川とその支流沿いに温泉が湧き出し、古くから湯治場として利用されてきました。「湯原温泉」の泉源は全て自噴泉で、源泉温度は45度前後。川底から自然に湧く足元湧出の露天風呂「砂湯」が有名で、1980（昭和55）年の「露天風呂番付」では西の横綱に選ばれています。足元湧出は全国の温泉の1％未満のため希少価値が高いのです。

自然豊かな岡山県北部、鳥取県境の鏡野町（かがみのちょう）に位置。江戸時代に津山（つやま）藩が藩主や家臣のために専用の湯場を造って鍵をかけ、一般の入浴を禁じたとされる「鍵湯」があります。「鍵湯」の湯元は吉井川（よしいがわ）の川底で、そこから温泉が湧いています。奥津温泉では地下150ｍから、40度以上の湯が毎分約1000ℓ（各所の源泉合計量）も湧き出ており、漂白成分を含んだ泉質が特徴。また、奥津温泉独特の風習「足踏み洗濯」も有名です。奥津温泉の下流3kmにわたって流れる吉井川沿いの渓谷、名勝「奥津渓（おくつけい）」では、花崗岩の節理と侵食による奇岩・滝・甌穴（おうけつ）などが見られます。

岡山県北東部の美作市のほぼ中心地、吉井川沿いに位置する温泉。約1200年前に高僧・円仁（えんにん）法師が一羽の白鷺に導かれて発見したと伝えられ、別名「鷺の湯」と呼ばれています。塩化物泉とは塩分を多く含む泉質で、口に含むと少し塩味を感じます。窒素ガスを含有しており、入浴するとそれが小さな泡になって体に付着します。

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から岡山県を分析！
岡山県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。岡山の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載！